記録的な酷暑がやっと落ち着いて、暦は10月になりました。
10月の別の呼び名は「神無月」
神様がいない月という意味ですが、神様たちはどこに行ったかというと、
そう、出雲です。出雲では「神在月(かみありづき)」と呼んでいます。
この和風の呼び方は旧暦を基準にしているので、本来の神無月は11月に入ってからなのですが、
旧暦の10月11日から17日まで、日本中から八百万の神様たちが出雲大社に集まって
「神議(かみはかり)」という会議をするそうです。
ここでは、人間には計り知ることのできない事柄が決まるといいます。
主なテーマは「縁結び」。
確かに、神様がそう決めたとしか思えないような出会いってありますよね。
出雲大社の敷地には、会議に参加している神様がお泊りになる宿となる社も
ちゃんと建てられているんです。手厚いですね。
でも…
日本中の神様が出雲に集まってしまったら、神様不在の土地に住む民たちは
誰が守ってくれるのでしょうか。
それが心配無用なのです。
ほとんどの神様は出雲へ出張してしまいますが、
ちゃんとお留守番をしてくれる「留守神(るすがみ)」様はいらっしゃるのです。
留守神様の代表が恵比寿神。漁業・農業・商売の神様です。
それから、料理の火の神様で家族や家畜をまもる竈(かまど)神。
医薬や航海の安全を守る金毘羅神。
村の守り神として疫病や悪霊の侵入を防ぐ道祖神。
など、止めてはいけない、人々の営みや安全を守る専門家はしっかりと残って
お留守番をする仕組みになっているようです。
各地から集まる神様たちは出雲大社の近くの
「稲佐の浜」という美しい海岸に下り立ちます。
神々の出雲空港ですね。
毎年必ず同じ日に、同じ場所からやって来て、同じ場所に集まり、同じテーマで会議をする。
そして、仕事が滞らないように留守番部隊も置く。
この几帳面さ、きめ細やかさ、千年余りの時を脈々と伝え続けている、
まさに日本人の象徴のような神話の世界です。
そして出雲の人々も、神様をお迎えする準備からお見送りまで、毎年変わらずに、
代々務め続けてきました。
今、日本中、世界中から出雲に参拝・観光に訪れるお客様を、心を尽くしておもてなしをしています。
これも、とても日本らしい姿ですね。
余談ですが、
出雲が発祥とされているものの一つに「ぜんざい」があります。
神様会議の際に行われる神事「神在祭(かみありさい)」のときに振舞われた
「神在餅(じんざいもち)」の「じんざい」が「ぜんざい」に変化したそうです。
参道付近はじめ市内には美味しいぜんざいのお店がたくさんありますので、
出雲へお出かけの際にはぜひ、出雲のぜんざい、味わってみてください。