家族葬エピソード ~家族の食卓~

のぼりとの杜コラム

家族の食卓

父、母、娘3人、の5人家族の母親が急逝され、その葬儀の打ち合わせを行った時のお話しです。
喪主はお父様がお務めになられました。

喪主様、娘さん3名を交え、お母さまとの思い出をお聞きしたところ、お母さまは料理が得意で、それが娘さんたちの自慢でもあったというお話しを語られました。話は尽きることなく、お盆やお正月は親戚が集い、お母さまが自慢の料理で振る舞った話し、お母さまより料理の作り方を教えてもらったのだけれども、なかなかお母さまの同じ味にならずに、料理のコツの話を聞いたりしたというお話しなどもお聞きしました。お母さまとの、料理にまつわるお話しは尽きることはありません。

娘さんたちは料理の得意だったお母さまを偲ぶ葬儀がしたいということがお打合せの中で痛いほど伝わり、また喪主であるお父さまは娘さんたちの気持ちを大事にしたいということもわかってきました。付け加え家族だけの葬儀にしたいという要望もあることがわかりました。

そのため、私は家族だけで母に教わった料理を味わう「家族の食卓」でのお別れを提案しました。僧侶の読経などは一般的な葬儀の進め方で行います。葬儀後のお食事をお母さま直伝の料理を味わう会にする提案です。
ご家族の皆様にも大変賛同いただき「家族の食卓」でのお別れを行うことになりました。

お通夜の当日、僧侶の読経の読経が終わり、「家族の食卓」でのお別れの会が始まりました。娘さん3人が力を合わせ母に教えてもらった料理を作り配膳しました。皆さん着座しました。だれもが、お膳に並ぶお母さまが作ってくれた料理を懐かしそうに眺めていました。誰からといわず懐かしそうに会話が始まりだしました。
娘さんの一人がお父様に「母の味に近づいたでしょ。」と自慢げにというと、お父様は「まだまだ!」などと返しました。とても和やかな雰囲気でした。
その後も、母から教わった料理を通して語られる、母との良い思い出話しは尽きることはありませんでした。笑顔が絶えない会食のひと時でした。
まさに、家族の想いが込められた家族想(葬)だったなぁと記憶しています。

このように葬儀の形は自由に創ることができます。私たちもご家族のご希望に寄り添えるそんなお手伝いができたときはとても嬉しく思います。
ご葬儀の主役は葬儀社ではありません。故人様、ご家族様なのです。