あるご葬儀のお手伝いをしていたときのことです。
もうすぐ開式というときに、喪主様の奥様からと呼び止められました。
「あの、ちょっと伺いたいんですけど。 知り合いの方から、
お葬式に白いパールのネックレスは駄目だから、黒やグレーのにしろと言われて。
このネックレスは、一般的に、駄目なんでしょうか」
その奥様は 黒のシンプルなワンピースの喪服をお召しになり、
一連の上品なネックレスを着けていらっしゃいました。
「黒真珠ももちろんいいですけれど、二連や三連だったり派手な飾りのあるものでなければ、
白いパールでご参列される方もたくさんいらっしゃいますよ。
素敵なネックレスですね」
とお答えすると
「それならよかったです。これが失礼に当たるなら、どこかで黒いのを買わなきゃと思って。
実はこれ、私の母の形見なんです」
とおっしゃいました。
「大切なお母様のものを身に着けてのお見送りでしたら、どこかで新しく買ったものよりもずっと、
お義母様(故人様)への礼を尽くされていることになるはずですから、
どうぞそのままでいらしてください」
奥様は安心されたご様子で、喪主様のお隣の席に戻られました。
お葬式の装い、難しいですね。
「一般的に」「普通は」という言葉はよく使われますが、土地柄や年代で、その許容範囲は案外違うものです。
良かれと思って助言をしてくださる方も時々いらっしゃいます。
華美ではなく、故人様とご遺族への配慮があれば、細かい点はそれほど大きな問題ではないと私は思います。
大切なのは、故人様への感謝の想い、想葬の気持ちではないでしょうか。