故人様を見守る〝寝ずの番〟最近の事情は?

のぼりとの杜コラム

ろうそくの火と線香を絶やさずにしておく「寝ずの番」。聞いたことがあるかと思います。
「寝ずの番」とは通夜の儀のあと故人様を寝ずにひと晩、見守ることを言います。「夜伽(よとぎ)」や「お線香番」などと呼ぶ地域もあります。その際にろうそくの火を絶やさず、線香も途切れないようにし、翌日の葬儀に備えるわけです。
ひと昔前は自宅での葬儀が多く、当然ながら故人様は出棺まで一緒にいられますので寝ずの番も、家族が順番に…とあたりまえの慣習でありました。

寝ずの番の意味は?
諸説あります。
①灯火は浄土への道灯りとされ、天国へ迷わずいけるようにという祈りを込めた意味。
②線香には魔除けの効果があり、故人様に悪霊が憑りつかないように。
③もしかしたら息を吹き返すかもしれないから側にいて見守っている。
などの説が言われております。③の息を吹き返すかも…というのは医療が発達していなかった時代に、本当にあったとかないとか!?
①の道灯りは、現在でも広く言われております。コラムの文頭で「寝ずの番は通夜の儀の後…」と書きましたが、正式には亡くなった時から浄土への旅が始まるわけですので、この意味からすると、亡くなったその夜から寝ずの番をするのが正式でもあります。

このほかにも
通夜は故人様と最後の夜です。寝ずの番をしながらお酒を交わし、思い出話しに浸ることもできます。私のじいちゃんが亡くなった時はまさにそれでした。通夜の儀の時はみんなが暗い表情で、いかにもお通夜といった感じだったのですが、寝ずの番が始まったころには笑顔でじいちゃんの話しをしていました。(私はさすがに途中で寝てしまいましたが汗)

今の現状は?
自宅での葬儀が減り、貸式場での通夜・葬儀が多くなったことや、亡くなった後にご自宅ではなく葬儀社の安置室で通夜・葬儀までお願いするケースも増え、寝ずの番というものは少なくなったように思います。特に都心部では通夜の儀のあとも夜通しの滞在ができたとしても防火管理上、火を消さななければならない各式場の決まりもその理由のひとつです。
また、寝ずの番=徹夜にもなるわけですので身体的負担を考えるご家族も増えました。今では巻線香といって渦巻き状の線香もあるので寝ずの番ができる環境でも、負担を軽減するのであれば活用しても良いと思います。

8時間から10時間ほど灯せます。

通夜が終わる頃には、生前からの介添えや看病、また葬儀の準備等でご家族は疲労もピークを迎えます。寝ずの番ができる環境でもくれぐれも無理はせず、文中でお話しした巻線香を使用するなどして少しでもお身体を休めることも必要です。翌日は葬儀になります。
私の経験上、葬儀の時に喪主様が疲労で気分を悪くし救急車を呼んだことが何度かありますので…。