葬儀でよく見かけた白黒の幕。実は…。

のぼりとの杜コラム

白と黒が交互に並んだ幕を鯨幕と言います。

この幕を見るとやはり、お葬式をイメージしますよね。
鯨幕の由来は、皆さまお察しの通り、生き物の鯨の色から来ています。でも、鯨の色は白と黒なの?鯨のお話しも諸説あるようですが、ここでは置いておきましょう(^_^;)

さて、この鯨幕ですが、元々はなんと!お祝い事などの慶事でも使われていました。
時代とともに葬儀などの弔事の使用が定着したのは西洋文化が入り始めた明治に入ってからとのことです。西洋では弔いの色は黒であることが由来です。本来は慶事・弔事で使用していたものなので、皇室での慶事では今でも白黒幕が使われているそうです。でも、やっぱりイメージは葬儀の場面ですよね。

なんで葬儀では鯨幕を使用するの?
①「葬儀をこちらで執り行っていますよ」と、周りに知らせるため。
② 荘厳なる葬儀式場空間作りのため
③ 幕を張り、仕切りを作ることで見せたくないものを隠す。
特に葬儀は荘厳な聖域であります。
その場所をしっかりと周知するためと荘厳空間の確保が大きな意味合いとなります。

また、自宅葬や公民館、自治会館などでの葬儀が主流であったひと昔前は鯨幕だけでなく、白布幕を使い、室内をぐるりと張り巡らせました。エアコンや時計、室内の柱や室内の突起物なども白い幕で覆ったり、隠したりと葬儀空間は特別な物だったのです。幕張りは葬儀屋さんの腕の見せ所でもありました。事実、今でも葬祭ディレクター試験には『幕張り』という実技試験が課せられています。
余談ですが、『幕張り』と聞くと〝千葉の幕張〟をイメージしませんか?葬儀屋さんあるあるですが、今でも葬儀での幕張りを先に連想してしまいます(笑)

閑話休題

近年は自宅での葬儀が減少し、葬儀専用式場を使用することが多くなりましたので、鯨幕を見かけることは少なくなりました。式場内での幕張り自体が禁止にもなっているところがほとんどかもしれません。
自宅での葬儀の際も、住み慣れた愛着ある自宅そのままで葬儀を希望される方が多くなっています。家族葬であれば、葬儀の〝わざわざ〟感を演出する必要もないですもんね。自宅はすべてがメモリアルコーナー。ご家族や近親者のみが集まる葬儀であれば、家中のものを隠す必要もありません。
現在の自宅葬の良さの理由はここにあるのです。昔の自宅葬のイメージとは変わってきています。

めっきり見かけなくなった鯨幕の意味やルーツはなかなか奥深いものでした。
過去のコラムでも葬儀で見かけなくなってきた物をいくつかご紹介してきましたが、地域や風習によっては、まだまだ鯨幕は活躍しています。
葬儀に古し、新しはありません。
鯨幕の活躍する葬儀でも「古い昔の葬儀のやり方だなぁ…」ではなく「葬送文化を大切にしているなぁ」と思っていただけたら幸いです。