葬儀の知識とマナーVol.9 ~葬儀の風習「逆(さか)さごと」あれこれ~

葬儀の知識

葬送儀礼には昔から伝わる様々な風習がありますが、その中のひとつ「逆さごと」。
耳にしたこと、目の当たりにしたことはありませんか?
今回は葬儀の流儀ともなっている「逆さごと」についてご説明していきます。

【逆さごとの云われ】
葬儀の際の「逆さごと」とは通常とは逆に行う作法のことを言います。昔から死者の世界はこの世とは別の世界であり、全てが逆さまになっていると考えられてきました。全てが逆さまであることから、人が亡くなると作法も通常とは逆に行うようするのです。また、葬儀は非日常的な儀式であるため、作法を逆に行うことで生の領域と死の領域を分け隔て、生の領域を守るお守り的な演出でもあるとも言われております。

【代表的な逆さごと】
逆さごとの作法はたくさんありますが、代表的な逆さごとをご紹介いたします。

◎逆さ水…通常とは反対の作り方をしてできたぬるま湯。
故人様を洗い清める儀式(湯灌)の際に、ぬるま湯を使用します。通常、ぬるま湯を作る時は熱湯に水を注いでいき適温にしていくかと思いますが、それとは反対に水に熱湯を注いで適温にしていきます。

◎逆さ布団…故人様に使用する掛け布団を胸元側と足元側の上下を逆にして使用します。

◎逆さ屏風…故人様を寝かせた枕元に屏風を立てる風習。その屏風も上下逆さまにします。

◎逆さ着物…故人様に着せる経帷子(白装束)の襟は左前合わせにする。
故人様に着せる経帷子や着物は、襟もとの合わせを故人様に向かい右側を奥にして着付けます。通常、浴衣や着物は向かって左側を奥にして着ますよね。また、直接着付けをせず、故人様のお身体に上から経帷子を這わす場合もありますが、その時は襟にあたる側を足元に向けて上下逆に合わせ這わす場合もあります。


旅支度のひとつ、足袋も左右反対に履かせ、紐の結び目は横にせず十字のように縦の結び目で終わらせたりします。

この他にも、死者を道に迷わせ戻ってこの世に戻れないように…と『火葬場の往復で道順を変える』という風習もあり、これも逆さごとに当てはまるかもしれませんね。
今回は逆さごとについてお話しをさせていただきましたが、この他にも葬儀の際の風習やしきたりは日本全国、地域ごとに様々なものが受け継がれています。みなさまの地域の風習も調べてみてはいかがでしょうか。是非、葬送儀礼の文化に触れてみて下さい。